みならい君のBCMS構築物語

この物語は、BCMSチームメンバーである「みならい君」が、上司や先輩に指導を受けながら自社のBCMを構築する物語です。

みならい君のBCMS構築物語

第2回 BIA(事業インパクト分析)の基本要件

BIA(事業インパクト分析)の基本要件

いさお常務
みんな揃ったかな?そろそろ2回目のミーティングを実施するよ!
みならい君
は~い、準備OKで~す!
けいこ先輩
本日もよろしくお願いします。ところで常務、先日の役員会で適用範囲は承認されたんですか?
いさお常務
そうだね、まずは、その結果の報告からだね。
前回の役員会において、みんなで作成した「BCMS適用範囲決定に関する基本要件書」を報告し、“AAA社向けのXXX製品の提供とその関連する組織”でBCMSを構築することを、出席した役員全員一致で承認してもらったよ。
けいこ先輩
それでは、早速BIAの実施ですね。
いさお常務
そうだね、ところでみならい君、BIAの目的を一言でいうと何かな?
みならい君
はい、任せてください!活動を特定すること、影響を特定すること…あれ、これらは目的ではなく手段ですね。目的は、え~っと…
けいこ先輩
みならい君、BIAの目的を一言で言えば、「BCPの対象となる“優先活動”を特定」することだと思うわ。
いさお常務
そうだね、厳密に言えば「事業活動を正しく理解した上で、BCPの対象となる“優先活動(業務や工程)を特定」”することだね。
図表-BCPの対象となる優先活動を特定する
みならい君
なるほど、ここが“発生事象型のBCP”と“結果事象型のBCP”の相違点になるんですね!
図表-発生事象型BCPと結果事象型BCP
いさお常務
おっ!みならい君、勉強しているね?
みならい君
えへへへ。
けいこ先輩
以前実施した危機管理におけるリスクマネジメントの単一障害点やCCP(クリティカルコントロールポイント)の特定に似ているように思うわ。
いさお常務
そうだね、考え方は非常に近いものがあるね!
でも厳密に言えば、BIAで特定される優先業務は1つとは限らないから、あくまでも復旧の優先順位を付けることが本質だよ!
けいこ先輩
はい!よく分かりました!

BIA実施前に準備すべきもの

いさお常務
それでは、実施前にやるべきことを整理しよう。
けいこ先輩
はい!まずBIAのステップは、

  1. 主要な事業(製品・サービス)を支える活動(業務や工程)を特定すること
  2. 各業務や工程が停止した場合の影響を時間の経過とともに明確にすること
  3. 最大許容停止時間(MTPD)を考慮した上で“復旧優先業務(工程)”を特定し、最小事業継続目標(MBCO)を明確にすること、目標復旧時間(RTO)を設定すること
  4. 各業務や工程間の依存関係を特定すること、各業務や工程の外部の依存関係(サプライヤ、外部委託先、その他該当する利害関係者など)と内部(経営資源)を特定すること、“復旧優先業務(工程)を支える資源を特定すること、

ですよね!

図表-最大許容停止時間(MTPD)・MBCO・RTOの相関図
みならい君
ちょっと待って!「主要な事業(製品・サービス)を支える活動の特定」とは、今回のBCMSの対象となる“AAA社向けのXXX製品”を支える業務や工程を整理することですよね。
ここは良いとして「各業務や工程が停止した場合の影響を時間の経過とともに明確にする」ってどういうことですか?
けいこ先輩
そう言えばそうよね。影響は全て事業の停止になるんじゃないかしら?
いさお常務
二人とも良いところに気が付いたね、う~ん、例えば、けいこさん!当社の“AAA社向けのXXX製品”の在庫量ってどのくらいだっけ?
けいこ先輩
はい、AAA社からは、半期、四半期で所要ローリング表を頂いて生産計画を立てていますので、XXX製品がだいたいn個で2日間分の在庫量で、XXX製品のオプション品がだいたいn個で3日間分の在庫量です。
いさお常務
ありがとう。よく理解しているね!
けいこ先輩
はい、いさお常務から本日の会議までに生産管理部や品質保証部などからQC工程図や生産計画、品質保証体系図などを入手するように言われていましたので、事前に目を通していたんです。あっ!
みならい君
あっ!
いさお常務
二人とも気が付いたようだね!
みならい君
常務、この情報から導き出される1つの結論は、大まかですけど、仮に“生産ライン”という“業務(工程)”が停止して2日経過しても在庫があるので製品の提供には影響なし、受注業務や出荷業務という“業務(工程)”が停止していなければ、注文を受けることや製品を出荷することはできるということですね。
また、停止が3日経過すると、XXX製品のオプション品は出荷可能だが、XXX製品本体の出荷が停止、さらに、停止が4日経過すると、XXX製品もオプション品も出荷が停止するということなんですね。
けいこ先輩
なるほど、この“経時的な影響の特定”を行うことによって、最大許容停止時間(MTPD)が明確になるんですね!
みならい君
そうか、このケースだと、最大許容停止時間が2日、最小事業継続目標がXXX製品のみの提供、目標復旧時間は、ラインが再開してからの生産リードタイムを差し引いた時間ということになるんですね!
いさお常務
二人ともよく分かってきたね。
“復旧優先業務(工程)”を決定する大きなポイントの1つが、“最も短い時間で復旧する必要がある業務(工程)”ということなんだよ。
けいこ先輩
ということは、もう1つのポイントが“停止すると重大な影響を及ぼす業務(単一障害点など)”になるんですね。
みならい君
なるほど、“最も短い時間で復旧する必要がある業務(工程)及び/又は停止すると重大な影響を及ぼす業務(工程)”を復旧優先業務(工程)と言うんですね。
まさに企業の弱点を理解し、それを克服(防災強化やBCPの準備)するための管理の仕組みがBCMなんですね。
いさお常務
そのとおり、それがBCMのねらいが“対応力の改善”と“復旧力の改善”であると言われるゆえんだよ!

依存関係を明確にすることとは?

みならい君
常務!最後に1つだけ質問!
依存関係(依存度)なのですが、外部依存度は法令規制を順守する上で必要不可欠な業務(工程)であったり、委託している業務(工程)などと分かりやすいのですが、経営資源の依存関係(依存度)が良く理解できないのですが・・・
けいこ先輩
それは、私に任せて!
人という経営資源の依存度が高い例は、有資格者しかできないようなもので、設備の依存度が高い例は、特殊な設備や自動化された工程、作業環境の依存度が高い例は特定の作業条件、クリーンルーム、温度や湿度などが考えられるわね。
またITの依存度が高い例としては手作業が困難な業務などよ!
すなわち、“復旧優先業務(工程)”にどのような経営資源が必要で、また依存度はどのような状況なのかを明確にすること!
みならい君
なるほど、極端だけど、“復旧優先業務その(工程)”がITの依存度が高ければ、ITが止まれば業務(工程)が停止するため、IT-BCPなどが優先的に作成されるんですね。
いさお常務
みならい君はほんとに極端だね・・・。
でも二人ともBIAのイメージがついてきたね。そろそろ作業に取り掛かろうか!

けいこ先輩
はい!事前に入手した情報に基づいて、この「BIAワークシート」に基づいて実施していくんですね!
図表-BIAワークシート
みならい君
よぉ~し!がんばるぞ!

第2回の連載はここまでです。
次回は、リスクアセスメントの実施プロセスについてのディスカッションを覗いてみましょう。